ひとさまのコメント欄を汚すのもなんなので

ヘタリア Axis Powers』に韓国から抗議が起こった時、読売記事は韓国キャラクターが登場しないと伝えていた。(中略)それを受けての韓国抗議批判も存在した。(中略)しかし先んじて「電撃オンライン」等が伝えていたところでは、韓国キャラクターも登場するとして、アニメ設定画が公開されていた。(中略)もし電撃オンライン等の広報記事が一種の誤報だったとしても、これでは『ヘタリア Axis Powers』に韓国キャラクターが登場すると解釈されて当然だ。韓国キャラクターが登場すると韓国側が勝手に思い込んだと批判するより、まず国内情報に原因があったと把握することが筋だろう。

以上引用部分略

つまり「アニメ版「ヘタリア」に韓国人が抗議したけど実は韓国はアニメには出てこないから原作の蔑韓描写がアニメで描かれることはありえないんで枯れ尾花すらないところでおびえた韓国人涙目wwwだいたい原作の描写だってオマエラの姿を忠実に映しただけだよwwwwww」というネタのうち前半は、アニメ用のデザインが起こされているので韓国の人が韓国キャラが登場すると誤解しても自然な流れであったという前提が暴露されて成り立たなくなってしまった、という記事です。
これだけで一連のヘタリアへの抗議を取り上げた記事についたブクマコメントの中で「秀逸なオチ」「オチにワロタ」という具合のものをつけてた人は、とりあえずみのもんたが耳元で「残念」って言ってるのが聞こえるかもしれません。

ブログ主の法華狼氏はこの以前、アニメ「ヘタリア」のキッズステーション放映中止を受けて、原作および作者の不用意さ、不勉強な部分を指摘しつつ、それ以上にこの騒動に便乗して露呈された読者やコメント者の意識の低さを糾弾するエントリをあげてプチ炎上しているのですが、私が「ヘタリア」をどう評価しているかというと、正直青年の絵は好みではないのでショタな「ちびたりあ」が好みである、と表明しておきます。
ヘタリア」というコンテンツの面白さはライトな801趣味をちりばめることで全体の虚構性、幻想性を高めた上で生臭い帝国主義時代を戯画化している部分にあることはまあ否めないと思います。私は近代以前の方が好きなので例えばマリアテレジアと七年戦争というマンガではオーストリアがシュレージェンを「私の大事なところをプロイセンに奪われ」と表現していますが、ヨーロッパユニバーサリスをプレイしたことがある人ならわかるでしょう、まるまっちいボヘミアの北部に細長く横たわるシュレージェンの形状を。こいつをボヘミアから奪い取ってブランデンブルクにぶらさげると、まあなんてヒワイな。という感じでニヤニヤが止まらないのは確かにあるのです。フリードリヒ大王が若い頃親友と駆落ち(違)した過去があることとか含ませるとよりヤバいことになるしね。まあ嘘レベルと不謹慎レベルも激増ですが。
あと「ちびたりあ」で神聖ローマ帝国がイタリアに対して示す異様な執着心、まあ狂おしい恋情ですが、これなんか神聖ローマ帝国に関する新書の2,3冊も読めば感じられてくることとはいえ、2ちゃんねるのスレまとめに対する関心からはじめた作者が歴史に対する興味を深め、それなりに勉強して作品に反映してるんだなぁ、というのがダイレクトにわかって愉しい。神聖ローマ帝国オーストリアハプスブルク家)をちゃんと別人格としているあたりわかってるよねー、と思います。

で、このエントリのコメント欄に、勿体無いコメントがあったので柄にも無く突っ込んでみようかな、真面目そうな人だし。と思いまして。

スルーしたい 2009/01/22 02:29
アニメの韓国には声優もいないし、キャラづけはないまま多国が登場する会議エピソードなどの背景の一部として(べルギーみたいに)登場するだけだと思いますが。
(この辺はきちんとウェブ漫画やコミックスをフォローしていれば容易に推測できます)
これを「アニメに登場する」と解釈するのは無理があるんじゃないでしょうか?歴史考証や国に対するパブリックイメージがうんぬんといって置きながら、批評対象の作品に関してこれっぽっちの不確かな情報でよくこれだけエントリーを書くなぁと思います。
せめて全部読破して作者の日記も全部読んだ上で批判されては?それがめんどくさいならネタにするのはやめたほうがいいんじゃないですかね。それこそ作者の浅い考えということになるのではないですか。

この手の作品はあくまで「作者のフィルターを通して見た国や歴史認識」が読者とどの程度共有できるのか、というのが作品の人気や評価につながるのだと思います。
この世に『絶対的に正しい歴史』などというものが存在し得ないのですから、『俺的設定ではこうなんだよ!』っていう他人の創作物の設定に対して『俺的には違う!歴史的に間違ってる!』っていうのは自由ですけど、批評としては実にむなしいと思うんですが。
それなら俺的にはこうだ!って新しい韓国キャラを作って対抗するしか方法はないと思います。これだけ人気がある(コミックス50万部突破)というのは、作者の価値観に共感する人がそれだけいるという事であり、それはひとえに『この人のフィルターを通した各国のキャラ立て、なかなかいいじゃん』って思われているってことですからね。

19:01
>危険なネタほど面白いというなら、危険なネタを扱ったことで生じるリスクは負わなければ変な話になる。だいたい、韓国人がこういう過激な反応を示してくるのは、そのように描写してる作者が一番良く知ってることのはずなのに、認識が甘すぎると言わざるをえない。(

別に作者本人はこの件に関して特に反応もしてないですし(「心配おかけしました」「励ましありがとうございました」くらいですよね)、おそらく今までも「こういう描写はどうなのか」という反応はあったかと思います。書き始めて何年もたっていますし、ウェブ掲載が始まった当初に軍事関係のところで話題にもなりましたから。
(自分は当時その系統からのリンクで初めて読みました)
他民族国家に数年一人で暮らしているのですから、当然ネタにした国のみならずその手の批判は来ると想定はしているでしょう。でも「そのあたりは華麗かつのんきにスルー」が作者のスタンスなんだと思います。
それはそれでクリエイターとしてのある種の心の強さではあると思いますし、批判が来ても執筆を一向にやめないで今まで描いた韓国ネタ漫画を消したりもしないという点において、作者なりに覚悟を決めて執筆しているんだなと思うのですが。確信犯と言ってもいいかもしれません。
「まさかこんなに反響があるとは」などという反応があったり謝罪して元漫画が消したりされたら「認識が甘い」と言わざるを得ませんが、サイトやブログでもこれといって具体的な反応をしていないし、この騒動の中でも普通に通常営業しているというだけで、作者は十分肝が据わっているように見えます。

長っ。
最初の段、おそらく「ヘタリア」のファンの方なんでしょうね。このちょっと上にも似たような人がいますが、頭に血がのぼっているらしくエントリの趣旨をまったく理解していません。公式サイトの情報では誤解を与えてもしょうがない、という点を理解していません。しかも誤解を与える相手は「ヘタリア」の熱心な読者であるという前提すらありません、むしろコンテンツの中身には興味が無くことあれかしと獲物を物色しているクレーマーである可能性すら前提しているのが以前のエントリの趣旨でした。つまりこの時点でこのコメントはエントリと方向性が違うのでそれこそブログ主はスルーしてしまって構わないのです。誤読に基づいてブログ主に対する誹謗めいたことまで書いちゃってますしね。

でまあ私が突っ込みたくてわざわざこんな手間をかけて書き始めたのは二段目の
> この手の作品はあくまで「作者のフィルターを通して見た国や歴史認識」が読者とどの程度共有できるのか、というのが作品の人気や評価につながるのだと思います。
ここ。コメント者はこう書く以上作者といろいろ共有できてると前提しますが、それではこの「韓国ネタ」と題されたマンガで描かれている韓国キャラを、コメント主はどう思っているのでしょうか?
私は作者が悪意に基づいてキャラ造型を行っているとは微塵も疑いません。そもそもそんな意識を持ちながら描いて広く受け入れられるような題材でもなければ作者の環境でもありません、それはコメント者も理解しているでしょうから、純粋に「愛すべきキャラクター」として捉えている、と回答されると前提します。
ではなぜこんな騒ぎになるんですかね。
韓国キャラの描写が「愛すべきキャラクターとして描かれていることに自信がある」ならば、誤解を解くべくつとめるのがファンのつとめではないのでしょうかね。
なぜこのように侮蔑的言辞が飛び交っているのでしょうかね。それに疑義を呈したブログ主を良心的なファンが誹謗しにコメント欄に乗り込んでくるのでしょうかね。
これは作者の価値観に共感している人たちが起こしている事態ではないんですか?

そうではない、と回答されると臨川庵は愚考します。
作品の読者とは関係ない外野が騒いでいるだけだ、とおっしゃるとほぼ確信しています。

でもそれは外野を刺激するだけの毒がヘタリアにあるからだということでもあるんですよ。

後半についてはとくに言うべきことはありません。その通りでしょうね、とだけ。

最後に一点、これは今回「中国も文句言ってこないのに」ということで大国の鷹揚さを見せ付けた中国ですが、普通に帝国主義に陵辱される中国を描いています。おいおい801にしたらなんでもありかよ、と擬人化の危険性と欺瞞を象徴的にあらわしてるなぁ、と思う事例でした。