消失みてきた

良かった。

だが前田氏の80点はおかしい。おれ的にはなのは以上にファンムービーなつくりだったと思う。ハルヒシリーズに興味のない人が初見で心を揺さぶられるようなつくりにはなってないような気がする。原作に忠実すぎる。多少膨らましている(オーラスの図書館のシーンとか)とはいえ、肝心な世界観の説明とかはいっさいやってない。原作の描写、セリフをまんま映像にひきうつしていたように感じた。

だが、だが、スタッフの明確な意思もまた伝わってきた。朝倉の扱いだ。正直朝倉のキュートさはやばかった。「原作者めこんなおいしいキャラを使い捨てにしやがって!」という怨念が形をとってあらわれたような朝倉の笑顔におれの心はもってかれてしまった。消失長門の狙ったような媚態にはまったく動かされなかったおれのハートも、エレベータの2フロア分の降下時間が数分間に感じられるような朝倉とのひと時にはメロメロにされてしまった。

原作を膨らました中で、朝倉が刺しに来るのをまってるあいだのキョンの自問自答シーンは蛇足のきわみだったような。まあおれが原作でもこの部分はクドいなと感じていたからかもしれないけど、実際原作知らない人には意味のない問答だろうし、そもそもこの部分は、ハルヒキョンの出会いの物語にたいする結論の部分なので、長門をクローズアップした結果原作でもキョンの身勝手さばかりが印象付けられてしまう展開になってしまって正直どうよなところだと思ってるんだけど。

「選択肢」ってぶっちゃけ選択肢になってないよね。まあ消失長門はともかく消失朝倉とのスイートライフには大いに魅力を感じるところはあるんだが、バックグラウンドのない彼女らの社会生活は早晩破綻するに決まってる(だいたい長門の改変も矛盾が集中してる部分だし)ので、文芸部を選択するというのは現実的にありえない。「消失」は「恋に恋した長門の失恋」のドラマであって、時空改変も「悪夢の演出」以上のものではない、あやふやなもので十分なのだった。だからまあそこにつっこむのもあまり意味のある行為じゃないね。

でも、ま良かったですよ。BD出たら買いですよ。DVDは要らないけど。キャラは魅力的に描けてるし、みのりんも頑張った。そしてなにより朝倉がとてもよかった。谷口の言う「AA+」たる由縁を存分、ではないけれど、味わうことができたのは意味がある体験だったんじゃないかな。

…え?ハルヒはどうだったかって?
んなもん最高に決まってるじゃないですか。おれはキョンと同じで「本命はハルヒだが、長門、おまえもおれのもんだ、朝比奈さんは、まあそれなりに」なんで、寝袋から出た後の作画がちょっとアレだったのがすごく残念だったとか作画崩壊厨みたいなこと考えちゃったよ。OPはやっぱ「冒険でしょでしょ?」がしっくりくるよねえ。

集大成というのは納得。原作もそうだが、ハルヒに対するキョンのスタンスが決定的に変わるエピソードなので、ここで「涼宮ハルヒ」に終止符を打つことも可能ではあるのだ。続きに色気をもたせるような表現もあるが、そのセリフも「おれたちは未来に生きていく」という意味合いでとっても問題ないしね。だからこのプロジェクトはここで終わってもキレイではあるのかもしれない。